コラム

【社内報 NIKKOリレーションから知るDX②】GIGAスクール構想とは?

「GIGAスクール構想」とは何か?


「児童生徒向けの高速大容量の通信ネットワークを全国の小学校に整備するための経費」が、令和元年度補正予算案で2019年12月13日に閣議決定され、2318億円が盛り込まれました。これを受けて、「児童生徒1人1台端末環境」を実現するための全体像を描いたものが「GIGAスクール構想」です。

「ギガ」と聞くと、通信速度で使うギガをイメージしますが、「GIGA」は「Global and Innovation Gateway for All」の略です。これは「全ての人にグローバルで革新的な入り口を」という意味ですが、誰一人取り残すことなく子供たち一人ひとりに個別最適化され、創造性を育む教育ICT環境の実現に向けた施策。簡単に言うと、児童生徒に1人1台の学習者用端末と、クラス全員が一度にアクセスしても利用できる通信環境を整備するものです。

 

GIGAスクール構想が提唱された背景
経済協力開発機構(OECD)が、2018年に世界79カ国・地域の15歳約60万人の生徒を対象に実施した「生徒の学習到達度調査(PISA)の調査結果」が公表され、調査結果によると、日本は“数学的リテラシー”および“科学的リテラシー”は、引き続き世界トップレベルですが、同じくトップレベルにあった“読解力”については、調査の15位(前回8位)にまで、順位を落とした。さらに、学習活動におけるデジタル機器の利用が、他のOECD加盟国と比較して低調。

この調査結果から、日本のICT教育の遅れが浮き彫りになり、現状に対する文部科学省の危機感が「GIGAスクール構想」を提唱した背景になっています。

 

GIGAスクール構想の事業概要と施策
1人1台端末環境の実現を目指す「GIGAスクール構想」は、大きく3つの方面で方針が示されています。
♦ハード面…端末やネットワークの整備
♦ソフト面…デジタル教科書や教材の活用促進、ICTを活用した学習活動の例の提示など
♦指導体制…教員養成や教員研修でICTを活用した授業例を盛り込むなど

当社が大きく関わる部分の「ハード面」の施策として、大きく3つのポイントが上げられています。
パソコン1台あたり“4.5万円”を補助
児童生徒1人1台コンピュータを実現するために、1台あたり4.5万円を補助し、2023年までに達成する
通信ネットワーク整備費用の“1/2”を補助
2020年中にすべての小・中・高校・特別支援学校などで高速大容量の通信ネットワークが整備されるよう、費用の1/2を国が補助する
政府でモデル仕様書を用意
都道府県レベルで共同調達など、より効果的・効率的な調達ができるように支援する

 

ICT機器を活用したICT教育の事例を一部ご紹介
♦熊本市が公立校として初めてiPadを導入


熊本は2016年4月に発生した「熊本地震」で震度7を2回記録し、その後も震度6強、震度6弱の余震が起こっています。「未曾有の災害を経験し、子どもたちがこれから先、生き抜く力を養わなければならない。未来への礎作りのために、予算として30億円を投資し、一気に行き渡るよう環境を整備する」という市長の考えにより、iPadや電子黒板の大量導入や整備を開始しました。現在までに100校1万6500台が運用されており、2020年4月から、小中学校すべてに2万3460台を導入。3クラスに1クラス分の学習者用コンピュータと、教員用1人1台を導入予定。

♦教科書が「最新の情報」ではないことが発覚!
熊本市のある学校にて、社会科の授業で消防署の仕事について学んだときのこと。教科書には、ブーツと防火服を脱ぎっぱなしのように床に置き、出動を早める工夫が写真付きで紹介されていましたが、「本当にそうなの?」という疑問を子どもたちに投げかけ、iPadからテレビ会議アプリ「Zoom」を使って消防署とつなぎ、インタビューを実施。すると、現在はつまづいたりすることを防ぐため、教科書のような準備はしていないことがわかり、教科書が最新の情報でないことを、子どもたちはもちろん、先生も一緒になって気付くことができ、実際に学べることが広がっています。

♦“ごんぎつね”の授業から読解力アップ!テストの点数も高得点!


変わったのは授業風景だけでなく、iPadを用いた国語のテストにも効果が見られました。今までは国語の物語文“ごんぎつね”の音読を宿題としていましたが、“ごんぎつね”に合う音楽をつけようという授業にチャレンジ。すると、子どもたちは勝手に何度も音読をして、その場面の登場人物の気持ちを深く読み込むようになりました。結果、本質を突く理解に発展。それまであまり点数が伸びなかった漢字や文法のテストも点が取れるようになり、これまで点を取るのに苦労していた子も高得点を取ることができたというICT教育による授業の変化がテストの点数に表れました。

 

全国学力テスト出題・解答ともPC移行へ
小学6年と中学3年の全員を対象に文部科学省が毎年実施している「全国学力・学習状況調査」(全国学力テスト)について2023年をめどに従来の紙に記載する方式から、出題も回答もパソコンで行う方式へ全面移行する方針を固めました。出題の多様化や経費縮減、各地で異なる試験日の設定が可能になるといった利点が見込まれます。パソコンの整備が進まない場合、学力テストに参加できなくなる可能性もあるため、「GIGAスクール構想」を活用して、各自治体に積極的な導入を進めるように求めています。さまざまな問題を用意し、パソコンのネットワークを通じて一人一人の学力に応じた出題をして正確な測定につなげたり、各自治体の教育委員会の判断で試験日を柔軟にするといった新たな取り組みも検討しています。

 

新型コロナウイルスの影響


新型コロナウィルスの流行を食い止めるため、全国の小・中・高校に対して、3月2日より春休みまでの臨時休業が国より要請されました。中国では春節以降休みにしていますが、全国規模のクラウド学習プラットフォームを立ち上げ、1億8000万人の小中高生向けに授業放送を実施。チャイナモバイルなどの大手通信事業者や、アリババやバイドゥといった中国の巨大プラットフォーマーも協力し、教育を止めない体制を作り上げました。何が起こるかわからない状況下で、日本も教育を止めない体制づくりを「GIGAスクール構想」によって、進めていかなければなりません。

※この記事は、日興通信で発行している社内報『NIKKOリレーション』(vol.24)において、ITに関する基礎知識をわかりやすく解説したページを転載したものです。