【お役立ち情報コラム】半導体のおはなし
今、私たちIT業界にも大きな影響を及ぼしている、「半導体不足」。
騒がれてはいるけど、自分には関係ある?どこまで影響あるの?と思っていませんか?
現代の生活に欠かせない半導体。今回はこの「半導体」について、解説いたします。
■目次
■半導体とは?
半導体は、金属などの電気を通す物質「導体」と、ゴムやガラスなどの電気を通さない物質「絶縁体」の中間、普段は電気を通さないけど、ある条件を与えると電気を通すという物質です。
例えば【シリコン】。
シリコンは低温だと電気を通しにくく、温度が上がると電気が通るという性質があります。
ここで説明する「半導体」は、その性質を利用して作られたトランジスタや集積回路のことを指します。
半導体は、PC、スマートフォン、デジタルカメラ、テレビ、ラジオ、ゲーム機、冷蔵庫、洗濯機、エアコン、自動車などあらゆる電子機器製品に使用されています。
◆メモリ
プログラムを動かすために一時的にデータを保管するRAMや、データを半永久的に保存するROMなどの記憶装置です。
◆CPU
PCやスマートフォンにおける頭脳の役割を持つパーツです。
◆ダイオード
ダイオードは、電気の流れを一方通行にする部品です。
LEDと言われる「発光ダイオード」が最も有名で、テレビのリモコンやカメラの光度計などに使われる「フォトダイオード」、無線信号から音声信号を取り出せることを利用して、ラジオなどに活用されている「検波ダイオード」など様々な種類があります。
◆トランジスタ
トランジスタは、電気の流れをコントロールする部品です。
トランジスタが開発されるまで、電子機器には真空管が使われていました。
小型化が難しかった真空管に代わってトランジスタが登場したことによって、電子機器を小型化、高性能化させることができるようになりました。
半導体不足は、2019年から続く米国と中国の貿易摩擦が発端と言われており、2020年頃から世界中で露呈していきました。
また、5Gの登場により、スマートフォンで使用されている半導体「PMIC」の品薄が始まりました。
さらに、新型コロナウイルスの感染拡大による、いわゆる「巣ごもり需要」により、テレビやスマートフォンの需要が急激に高まったことが半導体不足を加速。
加えて、半導体製造に使用される、ネオン、クリプトン、キセノンといった希ガスやレアメタルの一部がロシアやウクライナから供給されているため、2022年以降は軍事侵攻が製造に影響をおよぼしています。
様々なことが重なった結果、今ような長期間にわたる半導体不足を引き起こしたのです。
半導体は以下の工程で作られています。
◆設定工程
回路を設計し、電子部品の製造工程で使用されるパターン原版をガラス、石英などに形成したフォトマスクと呼ばれるものを製造する。
◆前工程
半導体素子製造の材料であるウェハーに電子回路を形成する。
◆後工程
ウェハーから半導体を切り分ける。
半導体業界では、設計と製造をメーカーによって分業するのが主流で、設計を専門に行う企業を【ファブレス】、製造を専門に行う企業を【ファウンドリ】と呼びます。
◆ファブレス
半導体を製造する工場には巨額な設備投資が必要となるため、製造を外部に委託する経営手法として生まれたのがファブレスです。
生産設備のコストを抑えられるため、製品の企画・設計・マーケティング・販売などに投資できます。
一方、製造を外部に委託しているため、製品の品質管理・生産管理には注意が必要です。
顧客と取引するのはファブレスであり、自社のブランドとして商品を売ります。商品の質や価値を維持しなければ、顧客の信用を失ってしまいます。
◆ファウンドリ
ファウンドリはファブレスから製造を請け負います。
複数企業から請け負うことで、大量生産ができ、生産能力の効率化を図ります。
また半導体産業は市場の波があるため、複数企業と契約することで、1つの企業が不調だとしても他の企業でカバーできるというメリットがあります。
Intel共同創業者の一人であるゴードン・ムーア氏が、1965年に半導体技術の進歩について「半導体回路の集積密度は1年半~2年で2倍となる」と唱え、以降その通りのペースで進歩してきました。1975年には、次の10年を見据えて2年ごとに2倍になると予測を修正し、以降も維持され、それ以来「ムーアの法則」として知られるようになりました。
ファウンドリが生産機能のみに特化することで、技術開発への投資が可能になり、技術が進歩してきたと言えるでしょう。
世界的に半導体産業全体の売上高が上がっているのに対し、日本のシェア率はどんどん下がり、将来的には日本のシェア率はほぼ0%になるかもしれないとも言われています。
1980年代頃は、半導体売上高世界ランキングの上位5社を日本企業が占めていましたが、今では国内売上高1位であるキオクシア株式会社でも世界のランキングでは上位10位にも入っていません。
経済産業省は、「半導体は、デジタル社会を支える重要基盤・安全保障に直結する戦略技術として死活的に重要。 経済安全保障の観点から、国家として整備すべき重要半導体の種類を見定めた上で、必要な半導体工場の新設・改修を国家事業として主体的に進めることが必要。※」と考え、2021年3月より「半導体・デジタル産業戦略検討会議」を開始し、改善を目指しています。
※出典:経済産業省「半導体戦略(概略)」より
4回目の会議では、半導体市場の見通しを
・半導体市場は、デジタル革命の進展に伴い今後も右肩上がりで成長(2030年約100兆円)
・ボリュームゾーンは、スマホ・PC・DC・5Gインフラに使われるロジックとメモリで、米韓台が市場席巻
・今後、5G・ポスト5Gインフラの基盤の上に、エッジコンピューティング・アプリケーション・デバイス(自動運転、FA等)での新たな半導体需要の成長が見込まれ、これが日本の参入機会のラストチャンス
※出典:経済産業省 第4回 半導体・デジタル産業戦略検討会議資料「半導体戦略の進捗と今後」より
と捉え、将来の量産体制の⽴上げを⾒据え、2022年8月に、日本国内大手企業8社(キオクシア株式会社、ソニーグループ株式会社、ソフトバンク株式会社、株式会社デンソー、トヨタ自動車株式会社、日本電気株式会社、日本電信電話株式会社、株式会社三菱UFJ銀行)が出資し、日本政府も700億円の開発費を拠出した、半導体の専門家集団による半導体メーカー「Rapidus株式会社」を設立しました。
2022年11月11日の会見で、Rapidus株式会社は「最先端半導体の量産を2027年をめどに開始する」と強調しており、それが実現できれば、世界情勢に左右されず安定した供給が見込めるようになるかもしれません。